ルーマニア 2023年6月
<概要>
ルーマニアというと日本ではドラキュラやコマネチが浮かぶくらいで、よく知られていない国かと思いますが、国土の中央を走るカルパチア山脈の南部はトランシルヴァニア・アルプスとも呼ばれ、美しい景観が見られます。このエリアには、ルーマニア国内の舗装路で最高標高が1位のトランスアルピナ(Transalpina)と2位のトランスファガラシャン(Transfagarasan)という山岳路が走っており、ドライビングスポットとして有名です。後者は英国のTV番組トップギアのMCから「今まで見た中で最も素晴らしい道路」と称されたほどです。スイスやオーストリアと比べると知名度が低いため、観光客が少ないことも魅力です。
なお、トランスファガラシャンは正確にはTransfăgărășanと表記しますが、ルーマニア語特有の文字が含まれるのでここでは他の地名も含め英語のアルファベットを使用しています。
<トランスアルピナ(Transalpina)>
ノバチ(Novaci)とセベシュ(Sebes)を結ぶ全長148kmの国道(DN67C)です。最高標高は2145mで舗装路としてはルーマニア国内1位です。見どころはルンカ(Ranca)とオブルシア・ロトルルイ(Obarsia Lotrului)の区間で、植生限界を超え草原から岩肌へと景色が変わっていく様子を見ながらドライブを楽しめます。それ以外の区間は森の中を走っているので遠くを見渡すことはできません。そのため、山道を運転する分には楽しいですが、景色に大きな変化はありません。10月中旬から翌5月中旬まで冬季閉鎖されます。開通時期はその年の天候によって多少前後します。




<トランスファガラシャン(Transfagarasan)>
バスコヴ(Bascov)とクルツィショアラ(Cartisoara)を結ぶ全長151kmの国道(DN7C)で最高標高は2042mです(国内2位)。ルーマニア最高峰のモルドベアヌ(Moldoveanu)山と2番目に高いネゴイウ(Negoiu)山の谷間を縫うように走っているため、トランスアルピナより険しく、傾斜は急です。ハイライトは最高地点付近にある氷河湖のバレア湖(Balea Lake)です。湖畔には小高くなっている場所がいくつからあり、そこから谷間を一望できます。飲食・土産物の出店やホテルもあり、美しい景色を見ながら休憩できます。付近にはハイキングコースもありますが、私が行った時期は雪がかなり残っており素人が歩ける状況ではありませんでした。気温が低いので夏でも上着があった方が無難です。トランスアルピナ同様に開通時期は年によりますが、例年10月下旬から翌6月下旬まで冬季閉鎖されます。





<全ルートを通じて>
一部の工事区間等を除けば片側一車線が確保されており十分な道幅があります。舗装は結構荒れていますが大幅に減速しないと通過できないレベルの陥没などはありませんでした。見通しはよく、カーブミラーやガードレールはほとんどありません。ヘアピンカーブのRはそれほどきつくなく、勾配も緩やかなので走りやすいですが、コンパクト以下の非力な車だストレスがたまるかもしれません。退避所が沢山あるので、停車場所に困ることはないと思います。ガソリンスタンドはほとんどないので、麓で給油しておいた方が無難です。ルーマニア人の運転マナーは良い印象です。都市部では状況が違うかもしれませんが、極端に車間を詰めたりホーンを鳴らしまくるドライバーは見ませんでした。それから道路を歩いている動物を頻繁に見かけました。車が来ても平然と歩いています。牛、羊、山羊、馬、犬…熊を見たときはさすがに驚きました。



<アクセス>
日本からルーマニアへの直行便はありません。最も近いのはシビウ国際空港です。次に近いのはクルジュ=ナポカ国際空港でセベシュまで1.5時間。他には首都ブカレスト(Bucharest)のアンリ・コアンダ国際空港でバスコヴまで2時間弱、ティミショアラ(Timisoara)のトライアン・ヴィア国際空港でセベシュまで2時間弱と選択肢は多いです。隣国のハンガリー、セルビア、ブルガリアから陸路で行くことも可能ですが、ルーマニアは都市部を除き高速道路が発達していないため、ルート次第ではかなり時間がかかります。車で走ることを前提にしているので公共交通機関での行き方は省略します。ちなみにルーマニアの高速道路はヴィニエット方式を採用しています。基本的にレンタカーには最初から付与されているので個人で購入する必要はありませんが、念のため借用時に確認すると良いでしょう。
トランスアルピナ | トランスファガラシャン | |
開通時期 | 5月中旬から10月中旬(年による) | 6月下旬から10月下旬(年による) |
通行料 | 無料 | 無料 |
公式サイト | – | https://transfagarasan.travel/en/ |
<周辺観光>
どの空港を利用するとしても、トランスアルピナとトランスファガラシャンを周遊するのであれば、シビウ(Sibiu)は丁度中間に位置するので滞在地として都合が良いと思います。見どころは大広場、小広場や嘘つき橋を中心とした古い町並みと、プロテスタント、カトリック、東方正教の異なる宗派のキリスト教会です。半日で回れるほどの小さな町です。他にはシギショアラ(Sighisoara)やブラショヴ(Brasov)も観光地として有名です。利用空港や滞在期間に応じて立ち寄るのも良いでしょう。




<その他>
ルーマニアは基本的には物価の安い国ですが、空港や一部観光地(バレア湖など)では、相場に比べて食事がかなり高いことがありました。EU圏ですが現地通貨(レイ)を採用しているためユーロはホテルくらいでしか使えません。大体のお店ではクレジットカードが使えますが(MasterかVISA)、KIOSKや出店では使えないこともあり、チップ文化も考えると少額の現地通貨は用意しておいた方が良いです。両替店は市街地にいくらでもあるので、空港で換金する必要はありません。またシェンゲン協定には加盟していないので、EU内での移動でもパスポートチェックは必要です。
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