監督:ロン・ハワード(Ron Howard)
<概要>
1976年のF1世界選手権における二人のトップドライバー、ジェームス・ハントとニキ・ラウダのライバル関係を描いた実話に基づく映画です。陽気なプレイボーイのハント役をクリス・ヘムズワースが、冷静沈着でストイックなラウダ役をダニエル・ブリュールが演じます。対照的なドライバーが、下位カテゴリーのF3で出会い、F1への昇格や、それぞれの結婚、チーム移籍等を経て、76年シーズンを迎えます。選手権をリードしていたラウダはニュルブルクリンク北コースで開催された第10戦ドイツGPで大事故に遭い、瀕死の重傷を負ってします。ハントはラウダが欠場している間にポイントを稼ぎ、ラウダはわずか42日でレースに復帰。チャンピオン争いは最終戦の日本GPまでもつれこみます。
以下の感想ではネタバレもあります。
<感想>
ニキ・ラウダのニュルでの事故/復活劇はF1史の中で有名な話なので知っていましたし、当時は毎年のように悲惨な死亡事故があったことも知っていました。しかし、それはただの知識でした。この映画が描いているのは、常に死と隣り合わせの世界で頂点を目指して戦うレーシングドライバーの生きざまです。モータースポーツはハイテクな機械を使った競技ですが、そこに人間臭いドラマがあるから面白く魅力的なんだと思います。正直それほど期待していなかったのですが、感動しました。過剰な演出やCGに頼らず、実車とカメラワークでレースの迫力を表現している点が好印象です。主役二人の見た目が本物に似ていて、ラウダ夫妻にはドイツ語のできる演者をキャスティングするなどの拘りも感じられました(妻役も本人に似ています)。レースファンが見ても違和感はなく、長編ドラマとして76年以前/以後のストーリーももっと詳しく見たいと思える良作です。派手さはないので車に興味のない人にとっては、退屈に感じられるかもしれません。映画評論サイトでの評価は「フォードvsフェラーリ」の方が高いようですが、個人的には「ラッシュ」の方が好きです。ラウダ存命のうちにこの映画が製作されて良かったと思います。ちなみに調べた限り以下の脚色が見られますが、どれも細かいものです。
- 1970年のF3クリスタルパレスにおけるハントの接触相手はデイブ・モーガン。このころ所属していたのはヘスケスチームではない(72年から)。
- ラウダは1971年にマーチからF1デビューしており1973年からBRMに移籍。
- 1975年のアメリカGPではハントはリタイアしておらず4位フィニッシュ。またラウダは前戦のモンツァでタイトルを決めている。
- 1976年のベルギーGPとモナコGPの日程が入れ替わっている。イギリスGPでハントは一位入線するものの後日失格処分となっている。
- 日本GPで自らリタイアしたラウダはすぐにサーキットを去っているため、結果を見届けていない。
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