フォード vs フェラーリ(Ford v Ferrari)

書籍・映画

監督:ジェームズ・マンゴールド(James Mangold)

<概要

1960年代ル・マン24時間レースで無敵を誇ったフェラーリに挑戦したフォードの物語です。戦後のベビーブーム世代に訴求するため、モータースポーツでブランドイメージの若返りを図ろうとしたフォードは、経営危機にあったフェラーリの買収を計画します。しかし、レースにおける決定権を譲れないフェラーリが拒否し交渉は決裂。これに腹を立てたフォードの会長ヘンリー・フォード2世は、レースカーを自社開発しフェラーリを負かすことを決意。米国人初のル・マン優勝者キャロル・シェルビーが設立したシェルビーアメリカンにレース活動を任せます。シェルビーはドライバーとしてもエンジニアとしても高く評価しているケン・マイルズとともに、様々な障害を乗り越えル・マン勝利を目指すという実話をもとにした映画です。シェルビー役のマット・デイモンとマイルズ役のクリスチャン・ベールのダブル主演です。

以下の感想ではネタバレもあります。

<感想

見る前はフォード礼賛映画かと思っていましたが、主役の二人を邪魔する悪役企業として描かれていたのは意外でした。「フォードvsフェラーリ」というより「フォードvsシェルビーアメリカン」といった印象。この設定のお陰でドラマ性が増し、レースを全く知らない人でも興味を持てるストーリーになったと思いますし、結果が分かっているのに楽しめました。個人的には歴史的名車のGT40がいかに開発されたかというエンジニアリング面にもう少しフォーカスして欲しかったですが。アメリカ目線で描かれているので、フェラーリファンとして不快なシーンもありました。レース中にシェルビーがフェラーリチームに対して妨害行為をするシーンは不要です。金で勝利は買えないというセリフは、物量でフェラーリを凌駕した事実(1966年にはGT40を13台もル・マンに投入)と矛盾しているように聞こえます。良くも悪くもアメリカっぽい映画です。急な運転操作やありえないクラッシュなど演出が過剰なのは映画なのでご愛嬌といったところですが、明らかに史実と異なる脚色も見られます。それを批判するつもりは全くありませんが、純粋なレースファンとして真実をはっきりさせておきたいので以下に列挙します。

  • シェルビーが設計したコブラがル・マンに初挑戦したのは1963年(シェルビーアメリカンとしてのワークス参戦は1964年から)。フォードは1964年からGT40でル・マンに参戦していて、シェルビーアメリカンがレースオペレーションするようになったのは1965年。この経緯が映画では省略されており、あたかも1965年がフォードの参戦初年度ではじめからシェルビーと組んだように描かれている。
  • マスタングの開発責任者はビーブではなく実際はアイアコッカ。
  • フォード上層部の意向によりマイルズは1965年のル・マンに出場できなかったことになっているが、実際はマクラーレンとともにGT40をドライブしリタイヤしている。
  • 1966年のデイトナ24時間で、マイルズはフィニッシュライン直前でトップを奪い劇的勝利を挙げたという演出がされているが、実際には圧勝している。

逆に言えば、大部分は実話をベースにストーリーが構成されており、人間関係やキャラクター設定でうまくドラマを仕立てていると思います。この映画をきっかけに色々調べて勉強にもなりました。

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